まいごになったぞう 寺村輝夫/文・村上勉/絵
<どんな絵本?> ぞうの あかちゃんが まいごに なりました。 「あばば、うぶー。」 きりんがみつけて一緒にお母さんを探してくれますが、 途中川を見つけたあかちゃんぞうは、水遊び。 「あばば、うぶー。」 川で出会ったかばには、「わにに食べられるから早く帰るように」といわれても、 「あばば、うぶー。」 とうとう寝ているわにに出会い、面白がって尻尾を踏んだあかちゃんは 「やあ、うまそうな こぞうだな。」といわれても 「あばば、うぶー。」そんなあかちゃんを、わにはかわいく思うのです。 森には、らいおんがいて、ここでも「やあ、うまそうな こぞうだぞ。」と言われますが 「あばば、うぶー。」 らいおんのおなかにもぐりこんで昼寝をはじめたあかちゃんを見て、らいおんもかわいく思うのです。 らいおんは、あかちゃんをごろんと転がすと・・ごろんごろん・・ ごつん!とぶつかった先には、かあさんぞうの足。 無事に戻ったおかあさんにむかって 「あばば、うぶー。」 <初めて読んだ2才8ヶ月のヒメの反応> 「あばば、うぶー。」というフレーズをおもしろがり、赤ちゃんっぽく真似をしていましたが、何度言っても「あばばぶー」と。わにと、らいおんが出てくる場面には緊張するようで、「食べられそう」と言ってびくびくしながら聞いていました。 <おすすめポイント> 何を言っても「あばば、うぶー。」としかいえない、赤ちゃん象。でも、この一言には、場面によって感情の違いが描かれているため、読み方も変わってきます。 赤ちゃん象が次々動物に出会い、そこでみんながこの子に癒され、最後は無事に母親の元に戻るという展開と、村上勉氏が描く動物の表情や、余白をうまくつかった構図が、物語に温かみや、愛が流れる、とても心地よい絵本です。 <現在3才11ヶ月のヒメの反応> 今では、ちゃんと「あばば、うぶー」といえるように。私が「あばば、うぶー」と読むたびに、「お母さーんって探してるんだね」「お水おもしろいなあって思ってるんだね。」「わにさんこんにちは、って挨拶してるんだよね。」「お母さんここにいたの?って言ってるのかな」など、あかちゃん象の気持ちを想像しながら、言葉にしています。 <まつりかの感想> 喃語の混ざった、初語が出る1歳前後の頃、「あっ、あっ」とか「まんままんま」とかしか言えないけれど、こちらの言っている意味は分かるようで、指差しや表情を使いながら意思を伝えてきていました。 「あばば、うぶー」で、いろんな感情表現をする、あかちゃん象を見ていると、その頃のヒメを思い出します。 この頃は、子どもが発する言葉に対し、親は色々と推測しながら「○○したいの?」「○○だね〜」とたくさん話しかけます。そして子どももそれに答えるように微笑したり、顔をしかめたり。子どもは、働きかけをしてくれる人のことを、「自分のことを分かってくれる、信頼できる存在」だと認識するのだと思います。そしてそこにコミュニケーションが生まれます。 この本でも「あばば、うぶー」しか話せない象に向かって、動物たちが優しく話しかけ、あかちゃん象の要求を探りかかわりをもっていきます。 喃語しかはなせなかった子どもが、気がつけば言葉を駆使している。ヒメの発達を思い出しても、爆発的におしゃべりを始めるようになる1才半頃を皮切りに、語彙はどんどん増えていき、今ではシャレや冗談を言ったり、見事な突込みをいれてくるまでに言葉の表現は豊かになってきました。 こどもが言葉を自分の中でどのように育てて使い始めるのかを考えると、それは心の育ちと関係しているのではないかと思うのです。話しかけられることでの心地よさや、言葉を発することで相手が反応してくれることの嬉しさという体験を重ねることで、言葉を使ってコミュニケーションをする楽しさを感じていくのでしょう。 ヒメは時々「赤ちゃんになりたい」ということがあります。赤ちゃんは、泣いたり微笑んだり、「あーあー」というだけで、周りが、必死で赤ちゃんの要求を探り、声をかけてあげるのを見ているからかな?。 ![]() |
あいうえおってどんなかお 今井和子/文 宮沢晴子/絵
<どんな絵本?> あいうえおの「あ」って いう かお どんな かお 「あっ」と おどろく こんな かお 「ああ やだなあ」の こんな かお それとも それとも そーれとも 「あっかんべえ」の こんな かお 「あ」「い」「う」「え」「お」をそれぞれに のリズムにのせていろんな表情を表しています。最後は・・ いろんな かおが ありました さあて あなたは どんな かお <初めて読んだ3才8ヶ月のヒメの反応> 絵本にかかれた一つ一つの表情をみながら真似をしています。 「お母さんはどれが好き?私はこれ〜」と、その日のお気に入りの表情をお互いに指差してその顔を真似る遊びをしています。 <おすすめポイント>絵は、せなけいこさんを思わせる切り紙で描かれています。 手袋の親指を「あ」、人差し指を「い」、中指を「う」、薬指を「え」、小指を「お」として、5本それぞれがいろんな顔を紹介してくれます。 リズムのいい詩にのって、「あいうえお」を楽しむことができる言葉絵本。巻末には楽譜つき。 <現在3才9ヶ月のヒメの反応> 楽譜を見ながら、必死で音をとって口ずさんでいると、ヒメも覚えて絵本のページを繰りながら、一緒に歌って楽しんでいます。 <まつりかの感想> 作者の今井和子氏は、23年間保育士として現場に携わった経験をお持ちで、現在は東京成徳大学教授で、「全国子どもとことば研究会」の代表でもあります。今年初めに、今井先生の講義をお聞きする機会がありました。乳幼児期の子育てに大切なのは愛着であるということや、しつけについて、「叱る」と「怒る」の違い、「自立」と「自律」について、子どもの言葉について・・等等。 赤ちゃん期の子育てを振り返り懐かしく思うと同時に後悔を感じながらも、胸のつかえがとれて、ふっと楽な気持ちにさせてもらえるお話でした。ありのままの子どもを受け入れること、親の枠に子どもをはめ込もうとしないなど、頭でわかっていてもついやってしまうというようなことに、はっと気づかせてもらうことができました。 やさしい語り口調と、相手の目をじっと見つめてお話される眼差しや、具体的で楽しい講義内容は、無我夢中で子育てしている母親を厳しく諭すのではなく、そっと手をさしのべて下さるといった感じでしょうか。 そんな先生が書かれたこの本は、「あいうえお」のそれぞれのもつニュアンスを大事にしながら、それを子どもにリズミカルな詩と、楽しい絵で、子どもの目線にたって作られています。そして、これを歌にして子どもと一緒に楽しもうという保育士の視点から、楽譜がつけられているのかもしれません。 私が絵本講師をしているということで、個別にお話させていただくご縁があって、後日先生からこんな素敵な言葉をいただきました。 「花には太陽を 子どもたちには絵本を!」 私は、子どもにとって絵本は心の栄養だと思っています。親子がそっと寄り添って楽しめる時間と空間・・それが愛着なのだろうなと。 ![]() |
おおきいトンとちいさいポン いわむらかずお/作
![]() <どんな絵本?> おおきいトンとちいさいポンは、ふたりで野原を散歩しながら、くらべっこしています。 おおきいのは いいなあ。 ちいさいのは いいなあ。 おおきいほうが いいに きまってる。 ちいさいほうが いいに きまってる。・・・・・ 散歩しながら、大きいこと、小さいことのメリット・デメリットを体験しながら、お互いに一歩も譲らず・・ すると、風が吹いてきて、2人の帽子が飛ばされてしまいます。 トン(大きいほう)の帽子は細長いドラム缶の中に入ってしまいます。小さいポンが潜って取ってあげます。 ポンの帽子は、高く積まれた干草のてっぺんに。大きいトンが、ポンをもちあげてようやく取ることができました。 ちいさいのも いいね。 おおきいのも いいね。 <初めて読んだ2才7ヶ月のヒメの反応> 「大きい」「小さい」という対照のことばをたくさん覚えてきたころ。(「高い」「低い」や、「暑い」「寒い」など)。日常では、こっちが大きい、こっちが小さいと比較するだけだったけれど、この絵本で、おおきいのがいい、ちいさいのがいい、という比較をすることを楽しく感じられたようでした。 <おすすめポイント> でこぼこコンビの仲良しのお友達の会話のやりとりが面白いです。大きさの違いを認識できる頃の子どもにおすすめ。すべての文章が、トンとポンの会話でなりたち、無駄な説明は一切ない代わりに、絵が十分に物語っています。 トンとポンの背景に飛ぶトンボが、物語の展開に沿っていて2人の関係性をさり気なく表しています。 <現在3才8ヶ月のヒメの反応> 各場面で、なぜトンは大きいほうがいいといっているのか、ポンはなぜ小さいほうがいいと言っているのかについて、以前は理解できていなかった部分も、今ではそれらの理由を説明できるようになりました。 ラストシーンでお互いを認めるセリフがお気に入りです。 <まつりかの感想> 自分のほうが大きくていいんだ、小さくてもいいんだ、と両者譲らないところが子どもならではの自尊心の表現は、やがて、大きいからこそできることもあるけれど反対にできないこともあり、小さいからこそできることもあれば、できないこともあるということに気づいたときから、どちらかが出来ないときは、助けてあげることや、お互いを認め合う事という、他者を思う気持ちの表現に変わっていきます。 つまり、「おおきいのがいいな。ちいさいのがいいな。」という、主体文から、「おおきいのもいいね。ちいさいのもいいね。」となっています。 大きい、小さいを覚える2才頃から楽しめると思いますが、お友達としっかり関わって遊ぶようになる頃にもおすすめです。自分と他者の違いに気づき、自分と他者ともに社会的存在として自覚できることが、短い本の中に凝縮されていると思います。 昨年12月から今年1月まで、東京吉祥寺で行われていた、「いわむらかずお絵本展」(過去の記事をごらんください)でも、この作品の原画が一枚だけ展示されていました。14ひきシリーズが大きな紙に描かれていたのに対し、この本は、製本の大きさとほぼ同じだったと思います。 ![]() |
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