ともだちがほしいの 柴田愛子/文 長野ヒデ子/絵
<どんな絵本?> 子どもたちの遊び場「あそび島」に、転校してきた、ふうこちゃん。 まいにち かようことに きめたのですが まいごみたい みんな いそがしそうに あそんでいるのに。 きょうも ふうこは ひとりぼっち。 あさから ずっと ほん よんでる。 きょうも ふうこは まいごのきもち。 遊ぼうと誘ってくれるけどなんだか怖い。 やっと夏休みがきてなんだかほっとした気持ち。 前に住んでいたところの友達が、泊まりにやってきて、いっぱい遊んで笑った。 夏休みが終わり、また「あそび島」に行かなければならない。 おかあさんが心配していろいろ話しかけてくる。 「ねんどもあるし、 おりがみもあるでしょ。 ひとりで ほんをよんでも いいし。 しゃぼんだまもできるし・・・」 でも・・ ちがう! ちがう! そうじゃない! 「おかあさん ふうこは そんなことを したいんじゃないの。 ふうこは ともだちが ほしいの!」 さてふうこは、友達ができるのでしょうか? <初めて読んだ4才2ヶ月のヒメの反応> ふうこちゃんが、はるこちゃんに「いっしょにあそぼう」と声をかける場面に、自分も同じ経験があるようでずいぶんと共感しています。 また、2学期に大阪から引っ越してきた女の子のことを思って、「ふうこちゃんって、△△ちゃんみたい」と言っています。 <おすすめポイント> 主人公のふうこちゃんは、年長の一学期終了間近に引っ越してきた実在の子です。 初めての場所で、築いていく人間関係に葛藤する幼い心、そして、夏休みに遊びに来てくれた昔のお友達との交流をきっかけに、「ともだちがほしい」と奮起して、自分から声をかけて遊ぶようになった心の成長が描かれています。 くっきりとした太い筆遣いと、豊富なカラーで描かれた絵は、少女の心の揺れにあわせて背景の色も変わっていて、ポツポツした言葉で語られる文章とともにしっかりと物語ってくれています。 作者の柴田愛子さんは、横浜の「りんごの木こどもクラブ」という無認可の幼稚園を運営されています。そして、画家の長野ヒデ子さんは、以前その近所にお住いだったという御縁で他にも『ありがとうのきもち』もこのコンビの作品があります。 <現在4才9ヶ月のヒメの反応> 読みたい本を持っておいで、というと、最近では選んだ数冊の中に、この本が必ず入っています。夏休みに泊まりにきたお友達と一緒にお風呂に入ったり、布団で寝たりする場面と、はないちもんめをする最後のシーンがおきにいりです。 <まつりかの感想> 年中に進級したヒメは、クラスも替わり新しいお友達が徐々にできはじめているようで、「今日は●●ちゃんと、はじめてお話したよ」と、日々初めて耳にするお友達の名前が聞こえてきます。 どうやってお友達を作るの?と聞くと、「『入れて』って言う。」とか「お名前なんですか?って聞く」など、なかなか積極的に声をかけている様子。 ドキドキしないの?と聞くと、「でも、あの子とお話したいなって思ったら、ぐっとがんばって声をかけてみるの。ニコッて笑ってくれるとすごい嬉しい」と。 いつのまにかこちらが思う以上に、成長しているようで、ヒメなりに切磋琢磨しながら園生活を楽しんでいるようです。 昨年秋に、友人とグループを組み、市の教育委員会と共同主催で、家庭教育学級というのを開催し、柴田愛子さんに御講演をお願いしました。(過去の記事「ぶっくぱる2回目」は コチラ)そこで、絵本作家として、また保育者としての素晴らしいお話をいただき、この本についても、さまざまなエピソードをお話くださいました。中でも印象に残っているのが、ふうこちゃんが、ひとりでぽつんと居る様子をどんな言葉で表現するのか、編集の方と随分思案したとのお話。最終的に「まいごみたい」という言葉になっているのですが、本で顔を隠しながらそっと横目でみんなの様子をうかがっている絵とマッチしていて、身の置場のない様子を大変的確に表現した言葉だと思いました。(持っている本が、長野ヒデ子作品の『せとうちたいこさん』なのが、さりげなくて可笑しい )子どもは、集団生活をしていく中で、友達とのかかわりを持ちたいという欲求をかなえるために、その子なりの手段と知恵をもっていきます。年少のときに比べ年中以上になると、ひとり遊びをするよりも、友達と関わっていこうとする行動がより多くみられるそうです。その分、いさかいも多くなり、お互いに自己主張をするので、誤解も生じやすく、先生も、互いを納得させるのが難しいといわれていました。 一方、ひとりで遊んでいても平気、お友達と関わろうとしない子も増えているそうです。うまく自分の気持ちを伝えられないあまりに、手が出てしまったり、暴れたり、キレたりという行動も目立つようですが、これは何も子どもに始まったことではなく、親世代の姿勢を反映しているといえるでしょう。パソコンや携帯によるインターネットや、ゲームなどが、実際に世間と交わらなくても孤独を感じないですむ世界をつくってくれますから。 「ともだちがほしいの」という言葉は、素直な欲求のはず。しかし、「ともだちなんていらない」「ともだちなんてなくてもいい」と本気で思う人もいる現状です。その背景には、幼いころから無条件の愛情に包まれなくて自尊心を持てなかったり、競争社会で他人を見下したり、いじめたり、差別したりということを受けて、世間と断絶したいと思うようになるということがあるのかもしれません。 それでも、人は一人では生きられない、生のコミュニケーションは絶対に必要なんだということを当たり前に感じられる世の中であってほしいと思います。 ちなみに、昨年その家庭教育学級を受講してくださり、この本を購入した年長さんの女の子を持つお母さんのエピソードです。その時、引っ越してきてすでに一年、子どももすっかり園に慣れてたくさんお友達もいたそうですが、家に帰ってこの本を読み聞かせると、お嬢さんは黙りこくって涙を浮かべ、「私と一緒だ」といったそうです。 引っ越してきた当時は随分と気がふさいでいて、園の様子もなかなか語ってくれず、毎日重い足取りで園に向かう間、お母さんも娘の気持ちをもりたてようと必死になっていたというのを思い出され、「今更ながらに、その時の娘の気持ちを、この本を読むことで理解できたんです」と言われました。 「まいごみたいだ」という気持ち、「ともだちがほしい」という気持ち。日常の出来事にある子どもの心の動きを、温かな保育者のまなざしだからこそ描くことができた絵本だと思います。 ![]() |
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